1. 孔隙構造の解析に基づく新たな土壌水分特性モデルの構築

 vadose zoneにおける土壌水の挙動は,通常Richards式に基づく不飽和浸透理論によって記述され,土壌水分特性(保水性;体積含水率と圧力水頭の関係で表される水分特性曲線,ならびに透水性;透水係数と圧力水頭の関係,を指す)が現象を支配する重要な物理特性となっている。このため土壌水分特性を関数化するモデルが数多く提示され,数値計算等の解析に広く用いられてきた(代表的なモデルとして,Brooks and Corey式,van Genuchten式,谷式を挙げることができる)。しかしながらこれらのモデルは,実測データとの適合性を重視して導入された経験式であるため,本来土壌水分特性が基礎としている土壌の孔隙構造との関連は明らかでない。そこで,土壌の孔隙径分布を確率分布モデルで表すことによって,物理的意味が明らかな新たな土壌水分特性モデルを提示した。このモデルは,既存の代表的なモデルを網羅する適応範囲の広いモデルであると同時に,そのパラメータが孔隙径分布の平均値と標準偏差という明確な意味を持っている。約600種類の土壌をこのモデルで解析した結果,いずれの土壌に対しても良好な適合が得られた。

発表論文
小杉賢一朗・大手信人,森林土壌の透水性の評価における土壌間隙の連結特性の解析,日本林学会誌,74,373-382,1992.
Kosugi, K., Three-parameter lognormal distribution model for soil water retention, Water Resources Research, 30, 891-901, 1994.
Kosugi, K., Lognormal distribution model for unsaturated soil hydraulic properties, Water Resources Research, 32, 2697-2703, 1996.
Kosugi, K., General model for unsaturated hydraulic conductivity for soils with lognormal pore-size distribution, Soil Sci. Soc. Am. J., 63, 270-277, 1999.
Kosugi, K., J.W. Hopmans, and J.H. Dane, Water retention curve: Parametric models, In: Dane, J.H. (Ed.), Methods of Soil Analysis, Physical and Mineralogy Methods, Part 1, Soil Science Society of America, Madison, WI., 2001. (In press)