4. 不飽和浸透水によって運ばれる溶存物質量を正確に計測するための装置の開発と応用
vadose zoneにおける溶存物質の移動量の正確な把握は,森林の水質浄化機能や農薬・肥料・工場廃液等の汚染物質の地下水や河川への拡散過程の解明において重要であるにも関わらず,困難な課題である。その原因として,既存の不飽和浸透水の採取手法が物理的な浸透理論から見て必ずしも適切なものでないことを指摘することができる。そこで,埋設した吸引採水用ポーラス板にかける吸引圧を,採水部の土壌圧力ポテンシャルとその周辺の自然環境下にある地点のポテンシャルとの比較に基づき,コンピュータ制御する新たな採水装置を開発した(特許出願中)。この装置を用いて林地土層内の深さ30cmの浸透水を1年間にわたり採取したところ,酸性雨で供給される硝酸態窒素が植物の吸収によって消費され,浸透水中には全く検出されないことがわかり,森林の水質浄化機能が定量的に示された。
発表論文
小杉賢一朗,不飽和土壌中の鉛直浸透水の不撹乱採取手法の開発,水文・水資源学会誌,13,462-471,2000.
Kosugi, K., and M. Katsuyama, Measurements of groundwater recharge rate and unsaturated
convective chemical fluxes by suction controlled lysimeter, In: Impact of Human Activity
on Groundwater Dynamics (Proc. Maastricht Symp., July 2001), IAHS Publ., 2001. (In press)