森林水文学研究室ではどんなことを研究しているのか
「森林水文学」というと、狭義には、森林における水循環や降雨流出過程について調べる学問領域、というのが、これまでのところの一般的な認識かと思います。しかし当研究室では、これら狭義の「森林水文学」に限らず、森と水に関わる様々な局面から、森林と環境との関わり合い・相互作用についての広範囲な研究を行ってきています。当研究室は、日本で最初に「森林水文学」の名前を冠した研究室ですが、「森林水文学」という狭義の分野観の打ちこわしをリードしてきている研究室でもあります。
森林と環境との関わり合いを知る上で、つねに念頭におくべきは「生物圏の連続性」という概念です。森林における水循環は、同時に、エネルギー・炭素・窒素・およびその他の微量ガス態物質や溶存態物質などの循環と、切っても切れない密接な係わり合いがあります。この密接な関わり合いにおける、「水」というものの影響力の大きさゆえに、「水文学的視点」というものが、森林と環境との相互作用を知り、森林の機能を読み解く上で、不可欠な視点となってくるのです。そこで、現在社会をとりまく様々な環境問題に対する我々の行動哲学を確立するために、森林の機能と役割を明らかにしていこうとする今日的な諸研究に、この「水文学的視点」を組み込むことによって、新しく、有益な知見を得よう、というのが、我々の方法論の核となる考えです。
共同研究について
京大森林水文学研究室がうけつぐ伝統とは、「共同研究」の考え方です。
私がこれまで行ってきた様々なフィールドでの調査・研究は,共同研究者の皆さん(おもに研究室の先輩・同輩・後輩・学生の皆さん)と一緒にすすめてきました。フィールド紹介の内容の中には共同研究者の方たちが行っている研究が多く含まれています。フィールド調査を楽しいものにしてくれ,また私ひとりでは広げることのできない領域を開拓して私を楽しませてくれる共同研究者の皆さんにこの場をかりて感謝の意を表したいと思います。そして,最近すこしずつですが、外部の研究機関の方々とも共同研究を行うようになり、個人的な興味の重なるところで行うこのような少人数での実質的な共同研究が、なかなか楽しく実りも多いものであることを知りました。
共同してフィールド研究をすすめようという精神は、私が学生時代を所属した京大砂防学研究室(現:山地保全学研究室および森林水文学研究室)の伝統でした。ずっと前に外部に出られて活躍されている大先輩のなかにも、また研究室にきてまもない学生のなかにも、この伝統はめんめんと受け継がれているように思います。我々の研究分野は年々内容や研究領域そのものが変化していくもので、伝承の技なるものは存在せず、いつもやっている当人が一番の専門家のようなものです。ある程度研究を進めるともう先輩に教えてもらえることはほとんどなくなりひとりで進むことになります。そんな中で、フィールドを共用しそれぞれが自分の研究を進める一方で、協力しあって一人ではとてもできない大がかりな実験や観測を可能にし、また研究を多面的に広げていこうというこのよき精神は、大事に後輩たちに伝えていきたいと思っています。
また一方で、このような中では、自分の仕事、他人の仕事、自分と他人との共同の仕事、そしてその割合、各人の立場、などがともすると曖昧になり、そのことでいろんな問題が生じてしまうように思います。お互い気を配り、話し合い、そして環境改善して克服していきたい問題であると思っています。また、大学の研究室は研究機関であると同時に、研究者養成機関でもあります。研究者を志す後輩たちが、このような研究室のなかで共同の精神を大事にしつつも自分独自の世界を築いていけるようサポートしていけたら、と思います。
研究において競争の精神は尊いものであるが共同の精神はもっと尊い、そうです。
森林水文学研究室への分属を考えている学生さんへ
基本的に、どなたでもやる気をもってきてくださる方はwelcomeです
特に条件などはありません。どなたでもどうぞ。よく耳にする質問に、「物理とかプログラミングとか得意じゃないと無理ですか><?」というのがありますが、足し算掛け算引き算割り算ができれば、大丈夫だと思います。フィールド系です。
反対に、「計算とかプログラムとか頭使うのは得意だけど、野外とか汚れ仕事とか嫌いなので、フィールド作業しないデスクワークonlyの卒論できますか?」という人には、向いてないとおもいます。(幸い森林科学科所属の3回生には、めったにいないタイプですが)。将来的に、数値実験やモデル研究を志す人であっても、まず最初は、自分で森をみて、データをとって、それをもとに考えることから始めることが、不可欠であると当研究室では考えています。