京都大学農学研究科森林水文学分野・山地保全学分野
京都府立大学生命環境科学科山地防災学研究室

コカ・コーラ財団助成金研究
「水循環システムの恒常性を維持する森林生態系の働き」特設WEBサイト

プロジェクト紹介



コカ・コーラ財団助成金プロジェクト
「水循環システムの恒常性を維持する森林生態系の働き」
Resilience of hydrological system maintained by forest ecosystem functions.

期間:2018年1月~2022年5月


代表者:小杉緑子(京都大学農学研究科・森林水文学分野・教授)
分担者:勝山正則(京都府立大学生命環境科学研究科・山地防災学研究室・教授)
    
小杉賢一朗(京都大学農学研究科・山地保全学分野・教授)
    
 地球は水の惑星ですが、実際に我々陸上生物が利用できるのは、ごく限られた量の、陸域を循環する水です。近年、新しい技術が様々な種類の新しい水資源を生み出しているとはいえ、我々陸上生物は依然、必要な水資源の大部分を、この自然な水循環で再生される水に頼って暮らしています。そのため「自然の水循環の恒常性を保つ」ことが、水資源確保の上で最も重要な課題になるのです。

本プロジェクトでは、
1)自然の水循環の恒常性がどのように保たれているのか、森林の役割を明らかにすること
2)明らかになった知見を社会の共通認識として広めること
を通して、「自然の水循環の恒常性を保つ」ことに貢献することを目指しています。
我々は、恒常性の維持にとって最も重要なことは、正しいメカニズムの理解と、科学的な知見に基づくコミュニティ意識の醸成であると考えています。


ー森林の様々な機能を長期的に調べることの重要性についてー

 今日、地球の水循環は人間活動の結果として変化の危機にさらされていますが、森林は持続可能な水循環や人間社会を維持する上で重要な役割を果たしていると考えられます。例えば、森林生態系からの蒸発散の恒常性を維持することは、陸域における水循環システムの恒常性を維持する上で特に重要です。蒸発散により失われる水は、乾燥した地域では水の無駄使いと捉えられがちですが、根本的にみた場合、水循環における水の再生を担っているのは蒸発散過程であり、湿潤地域の森林における大量の蒸発散が陸域における水資源の再生はいうに及ばす、バイオマス生産や生物多様性などの森林におけるすべての生態系機能を支えています。また、日本を含むアジアモンスーンの湿潤地域では、多雨で急峻な地形のため、貯水システムにより水循環を制御し、旱魃を防ぐとともに洪水も防ぐことが水資源管理上の重要な課題になりますが、森林は水の滞留時間を延ばすことにより天然の貯水システムとして働きます。森林はまた、水の浄化にも貢献します。森林土壌は地表流を防ぎ、水を深部へと浸透させるのに役立っています。このような水は豊富な天然水資源となり、コカ・コーラ社の製品を含む様々な用途に利用されていますが、同時に豊富すぎる深層地下水は深層崩壊の危険も孕んでいます。このような水循環システムのメカニズムを理解し、恒常性を維持しつつ利用することで、水資源の確保と、災害の防止という、WIN-WINの関係を築くこともできます。

 このように湿潤地域では、単なる水の節約という概念が必ずしも賢明な選択ではありません。 自然の水循環システムの恒常性を維持する森林機能の科学的なメカニズムを長期にモニタリングしつつ、水を利用することが、重要です。特に日本では水資源のほとんどを森林が涵養しており、森林の役割を科学的に理解し、社会通念を変えていくことで、未来に渡る持続可能な水資源の確保が可能になると考えています。



本プロジェクトで行っている活動の詳細については、
英語サイト(English)